総括
2020年4月1日、新型コロナウイルス感染症対策本部設置(本部長;細井理事長・学長)に伴い、附属病院における新型コロナウイルス感染症対策の現状把握と対応策、今後の課題について議論し、方針を決定するために病院部会が設置され、部会長を拝命しました。病院部会で決定が難しい事項や大学にも関連する事項については、対策本部会議での審議事項として提案しました。
新型コロナウイルス感染症は外来診療、各種検査、入院体制、治療、手術、リハビリテーション、退院・転院とあらゆる場面であらゆる年齢の患者さん、そして職員が遭遇する機会がある疾患であり、新型コロナウイルス感染症に関するエビデンスも少なく、治療や感染対策について半ば手探りの状態で方針を模索する必要も多く、全体の病院部会で一度に議論するには膨大な時間を要すると考え、関係する部署や治療、検査をもとに最初は12、その後さらに2を追加した14のワーキンググループが設置され、長時間にわたる議論が交わされました。
病院部会の会議開催は、原則、毎週金曜日14時からの実施とし、審議内容に応じてWEBでの開催も併用しましたが、ほとんど対面の形式で行いました。
会議については、新型コロナウイルス感染症に関して、全国、県内の感染者の現状を共有するとともに、当院のコロナ患者受入状況を踏まえ、診療体制、コロナ病床の運用、ワクチン接種、薬剤使用などの課題に対して、病院内での運用を審議する場として重要な役割を果たしています。
病院部会での主な審議・決定事項は、以下のとおりとなります。
1 診療制限について
部会設置時は、緊急事態宣言の発出を受け、病院全体として外来の診療制限もやむを得ないと判断し、その内容や体制づくりについて協議を実施し、2020年4、5月に、外来診察や手術予定の延長が可能な患者さんを中心に外来の診療制限と電話診療の推進を実施しましたが、当院は県民の最終ディフェンスラインであるというコンセプトの元にコロナ、非コロナに関らず他の医療機関で診察が難しい症例はできるだけ当院で引き受けるよう努力しました。
2 コロナ病床の確保について
県が原則、毎週木曜日夕方に県内の医療機関、病院協会、医師会、薬剤師会、看護協会、保健所を交えてWEB開催する「新型コロナウイルス感染症に関する連絡会」において、県内の感染状況の分析や県における新型コロナウイルス感染症対策、各病院や宿泊療養施設の病床使用率に係る情報を共有するとともに、具体的な対応が必要な場合にはこの場で協議を行っています。
コロナ病床の確保と運用については、特に県との連絡会の協議を経て要請を受け、各段階に応じて、病院部会で審議を行った上で、病院運営協議会に諮っています。
当院は、奈良県民の最終ディフェンスラインとの位置づけから、重症患者については基本的に全て受け入れる必要があり、特に重症病床が逼迫した2021年4、5月については、重症病床の運用についての協議を行い、適切な運用に努めました。
3 コロナ診療体制について
新型コロナウイルス感染症に係る診療については、通常、患者の入退院に関する判断を感染制御内科の医師が実施していますが、患者数が増加した際には、内科系の医師が主担当医となり、さらなる増加の際には、これに加えて外科系、他科系の医師が主担当医となり内科系医師がフォローするといった対応を実施することにより、病院職員が一丸となり、全科全床体制で新型コロナウイルス感染症の診断から治療を行うことが可能となっています。日々、現場で日々奮闘しているスタッフにこの場を借りてお礼を申し上げます。
病院部会の取組
- 最終更新日:2022/06/22集中治療WG
集中治療WGリーダー 川口 昌彦(麻酔科 教授) 新型コロナ感染症対策として集中治療WGが発足されましたが、ここでは主にC病棟3階集中治療部での運用について記載します。 ○新型コロナ感染症拡大前の体制 当院のC病棟3階にある集中治療部(C3-ICU)は、循環器内科領域、心臓血管呼吸器外科領域、そして一般集…
- 最終更新日:2022/07/14入院診療ワーキンググループおよび入退院支援センター
WGリーダー 藤本清秀(泌尿器科学 教授)谷口弘美(入退院支援センター) 奈良県では2020年1月28日に、国内では6例目、武漢渡航歴のない人では初めての新型コロナウイルス感染症陽性患者が発生しました。直ちに、本学理事長から「万一、本学の教職員が新型コロナウイルスに感染し、あるいは感染を拡大させるようなこと…
- 最終更新日:2022/08/31コロナ病棟運営WG
総合診療科 教授 西尾 健治 <新型コロナウイルス感染症患者診療体制の整備 軽症・中等症> 当院と新型コロナウイルス感染症(Covid-19)との関わりは、2020年1月に日本国内での感染初症例が奈良医大に搬送されて来た時から始まり、その後もダイヤモンドプリンセス号からの患者さんも数人奈良医大に搬送されてき…
- 最終更新日:2022/08/05発熱トリアージWG
WGリーダー 清水 啓敏(院長特命参与) 1.取り組みの概要 従来、当院の出入口はいくつもあり、比較的容易に出入りできる状況でした。また、外来診察患者数は多い日で3,000人超と大変混雑していました。診察は予約制ですが、患者さんは早朝から来られ受診まで外来で待機される方も多く、特に午前中は混み合っていました…
- 最終更新日:2022/07/14ER/救急/疑似症WGの取り組み
WGリーダー 福島 英賢(救急医学講座教授) 全国的な新型コロナウイルス感染症感染拡大に伴い、当院においても多数の発熱を伴う救急患者の来院が予想されました。当院における新型コロナウイルス感染症患者の受け入れについて検討が進む中で、新型コロナウイルス感染症の診断がついていない発熱患者、あるいは新型コロナウイル…
- 最終更新日:2022/06/22手術/IVR/心カテWG
手術/IVR/心カテWGリーダー 川口 昌彦(麻酔科 教授) 新型コロナウイルス感染症対策として、手術を含め、IVR(血管内治療)、心臓カテーテルにおいては、手術前検査、同意書取得、感染対策などにおいて同様の取り決めが必要となるため、手術/IVR/心カテWGが立ち上げられた。本記録集では主に手術室での経過に…
- 最終更新日:2022/08/31検査WG
中央放射線部における安全な画像検査の取り組みについて WGリーダー 丸上永晃(中央放射線部 副部長)村井 正二(中央放射線部副技師長)、森岡雅幸(中央放射線部副技師長) 【はじめに】 検査WGでは、適切な感染対策を行った上で安全に検査が行えるように、様々な部門の方々と協力して対策を講じてきました。コロナ診療に…
- 最終更新日:2022/08/05感染対策WG
感染対策WG感染管理室 徳谷純子 新型コロナウイルス感染症は2019年、年末ごろからニュースで取り上げられ始め、当初は中国の武漢で流行が始まりましたので、武漢ウイルス感染症などと呼ばれ、私も遠い国で起きていることと情勢を見守っておりましたが、奈良公園などでは外国人旅行者が多く、中国人旅行者でにぎわっていまし…
- 最終更新日:2022/08/17外来診療WG
外来診療WGリーダー 吉治 仁志(消化器内科学 教授) 当院は年間約50万人以上の外来患者さんを受け入れており、今回の新型コロナウイルス感染症による診療制限は外来部門においても様々な影響を受けました。院内での感染拡大は何としても避ける必要がありましたので、当院においては医療サービス課を中心として様々な感染対策…
- 最終更新日:2022/06/22職員サポートWG
職員サポートWGリーダー 鳥塚 通弘(精神医学 講師) 新型コロナウイルス感染症は、メンタルヘルスにネガティブな影響を与えます。特に、最前線で感染症と闘う医療従事者への影響は大きく、自身が感染するのではないかという恐怖に加え、特に感染症流行当初は偏見も強く、当院の医療従事者のメンタルヘルスの悪化が懸念されま…
- 最終更新日:2022/06/22小児WG
小児WGリーダー 武山雅博(小児科 准教授) 小児WGは、小児の新型コロナウイルス感染症患者の入院病棟、幼小患者の場合の付き添い、重症化した場合の管理、小児の採血・処置、薬剤の粉砕等について各担当部署と相談・対策の検討するために立ち上げられ2020年4月に第1回目を開催しました。第1回小児WGでは、以下のこ…
- 最終更新日:2022/08/31周産期WG
WGリーダー 赤坂 珠理晃(産婦人科学 講師) 当院はかかりつけ妊婦以外の診療にも対応しています。周産期には大きく妊婦の治療にあたる産婦人科部門と、新生児の治療にあたるNICU部門があります。 【産婦人科部門の取り組み】 1.妊婦への啓発 当院ではポスター掲示を通じて新型コロナウイルスに関する情報発信を行…
- 最終更新日:2022/08/17透析WG
WGリーダー 米田龍生(透析部 病院教授) はじめに 透析医療は限られた空間での多人数の同時治療となるためクラスター発生のリスクが高く、また透析患者は免疫能が低下しており、高齢、糖尿病、合併症併存などの背景も相まって重症化のリスクが高く、新型コロナウイルス感染症に対する対策が早期より重要視されてきました。 …
- 最終更新日:2022/08/31ワクチン接種
整形外科学・臨床研修センター 講師 仲西康顕 【背景】 2021年の春から夏にかけて日本全国で、空前の規模で新型コロナウイルスワクチン接種が実施されました。 新型コロナウイルス感染症の流行が始まって約1年となる2020年末頃までには海外からmRNAワクチンの有効性が報じられつつあり、未曾有の感染拡大に対し…
- 最終更新日:2022/08/31看護部の対応
看護部長 橋口 智子 対応病床150床の確保と人員確保 2020年度が始まった直後の4月2日、新型コロナウイルス感染症対策の緊急会議が開催され、対応病床150床を確保することが決まりました。担当することとなったのは、C棟8階、B棟7階、B棟6階、メディカルバースセンター、小児センター、精神医療センター、集…
- 最終更新日:2022/08/05コロナ禍における手術対応
中央手術部 中瀬裕之、川口昌彦、北口千寿子、堀川勝代 2020年1月に本邦で初めてCOVID-19患者が報告され、以降、感染状況は悪化と収束を繰り返し、現在、新たな変異株「オミクロン株」によりこれまでの経験を大きく上回る感染拡大が世界的に進んでいます。「第6波」です。ワクチン接種や新たな治療薬の開発と臨床応…
- 最終更新日:2022/08/31検査の対応
中央臨床検査部の対応 中央臨床検査部 部長 山﨑 正晴 Ⅰ 新型コロナウイルス核酸検出検査について 1. 本学での初期検査対応 当院での新型コロナウイルス感染症患者の受け入れが始まった当初は、その診断や隔離解除のための核酸検出検査はすべて感染症センターから奈良県保健研究センターに行政検査として検体が提出され…
- 最終更新日:2022/08/05リハビリテーション科の対応
城戸 顕(リハビリテーション医学講座教授) 【はじめに】 2019年末、中国武漢での報告に端を発する新型コロナウイルス感染症は本稿執筆中の2022年1月現在も未だ世界中で猛威を振るい続け、日本もまたオミクロン株による第6波の渦中に有ります。リハビリテーション治療はあらゆる急性期患者の予後改善・社会復帰に必須…
- 最終更新日:2022/08/31臨床研修医の活躍
臨床研修センター センター長 赤井 靖宏 はじめに 初期臨床研修医は、医師免許を取得した後に2年間行われる必須の臨床研修中の医師です。病院全体の機能が新型コロナウイルス感染症(以下、「コロナ感染症」という。)の影響を受けましたが、初期研修も例外ではなく、コロナ感染症の蔓延初期には、経験症例・手技の減少があり…
- 最終更新日:2022/08/05電子カルテの対応
1.電子カルテの対応 新型コロナ患者用情報シートの作成 (2020年5月) 新型コロナ患者用については患者の情報を国や県に様々な様式で報告しなければならない為、患者の各種情報をまとめられるように情報シートを電子カルテシステムに様式を定めて、各担当者が入力できるようにしました。 2.会計・投薬システムの順番表…
- 最終更新日:2022/06/22医療材料の調達と供給
病院管理課 新型コロナウイルスの脅威に直に向き合い、検査や治療に専念している医療従事者を感染から守るために、感染対策物品の確保に奔走した日々を振り返って サージカルマスク編 「マスクの使用は、1週間で1人1枚まで!」 この通知を出す寸前でした。 2020年2月、感染の広がりとともに、サージカルマスクやアルコー…
- 最終更新日:2022/06/22施設・設備面での対応
新キャンパス・施設マネジメント課 1.施設・設備面での対応に際して 当課では大学及び病院の建物、電気・空調・給排水衛生・医療ガス設備の維持管理や清掃・警備を担っていますが、このたび新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる病棟等の改修対応について、最優先事項であるとの共通認識のもと、応急対応も含めてできる限り…