外来診療WG

外来診療WGリーダー 吉治 仁志(消化器内科学 教授)

当院は年間約50万人以上の外来患者さんを受け入れており、今回の新型コロナウイルス感染症による診療制限は外来部門においても様々な影響を受けました。
院内での感染拡大は何としても避ける必要がありましたので、当院においては医療サービス課を中心として様々な感染対策を順次進めて行きました。
また、院外からの紹介に対しては地域医療連携室が中心となってコロナ対応病床数に応じた対策を行ってきました。さらに、新型コロナ対策病院部会において外来診療ワーキンググループを作成して医療サービス課・地域連携室と共に様々な課題に対して検討を行いました。これらの取り組みを、定期的に開催されている外来医長会議において各診療部門に周知しながら当院全体として統一した対応を取ってきました。
以下に経時的な当院における外来部門での対応を記載します。

2020年4月〜

・外来患者さんの待合室などの椅子について、全ての診療科において診察待ちや受付順番待ちの患者さんが一定の間隔を空けて座れるように院内全ての待合椅子に使用不可シートの表示を貼ると共に、外来診療受付においてもソーシャルディスタンスを取って並んでもらうように足形のラベルを貼りました(図1)。

図1:外来診察受付におけるソーシャルディスタンス対策
図1:外来診察受付におけるソーシャルディスタンス対策

・対面で接触する可能性がある受付の全てにアクリル板を設置して飛沫による感染予防対策を行いました。当初はビニールを貼るような応急処置的なものが多い状況でしたが、現在は全てそれぞれの場所のサイズに合わせたしっかりとした物になっています。これらのアクリル板は患者さんを守るだけではなく、職員の健康を守る点からもとても大切ですので感染対策の当初から行っていました (図2)。

図2:外来各種受付における飛沫対策のアクリル板設置とソーシャルディスタンス対策-1
図2:外来各種受付における飛沫対策のアクリル板設置とソーシャルディスタンス対策
図2:外来各種受付における飛沫対策のアクリル板設置とソーシャルディスタンス対策-2
図2:外来各種受付における飛沫対策のアクリル板設置とソーシャルディスタンス対策

図2:外来各種受付における飛沫対策のアクリル板設置とソーシャルディスタンス対策

同時に、奈良県の感染症指定医療機関としてコロナ専用病床を確保するため病棟全体の稼働率を抑制することになりましたので、外来患者さんをこれまでと同様に全て受け入れることは非常に困難な状況となりました。そのため地域連携室が中心となって地域の実地医家に対して下記の様々な周知活動を行いました。

2020年4月6日〜

・地域医療連携室を介した初診予約の停止を決定しました。すでに予約されていた多数の患者さんへの連絡、紹介元の主治医や370件にのぼる連携医療機関への個別電話連絡による診察延期の調整、と言った膨大な作業を地域医療連携室が中心となり行いました。その後、外来受診をされた患者さんに初診予約停止のお知らせを配布すると共に、院内向けに他府県からの初診受付停止について周知を行いました。

2020年4月20日〜

・病院玄関で外来患者さんを含めて全ての入館者に検温と手指の消毒を行っていただくことを開始しました。病院玄関も入口と出口を分離して接触をできるだけ減らすようにしました。病院玄関で体温が高かった場合は、一般の患者さんと接触せずにそのまま発熱外来へ誘導できるように動線の確保も行いました。
2021年1月からは手指衛生徹底のために、病院玄関に加えて外来診療科を中心として病院各所に消毒液入りのスプレーを多数設置することも追加しました(図3)。

図3:病院玄関における体温測定と手指消毒
図3:病院玄関における体温測定と手指消毒
図3:病院玄関における体温測定と手指消毒
図3:病院玄関における体温測定と手指消毒

図3:病院玄関における体温測定と手指消毒

2020年4月21日〜

・電話診療を開始しました。これまでクリニックの一部でのみ認められていた電話診療がコロナ禍の時限措置として大学病院でも可能となりました。当院の患者さんは高齢の方が多く、当院がコロナ患者さんを多数受け入れていることは各種報道で知っていることもあり、外来通院に二の足を踏んでしまうケースも見られていました。外来医長会議でも具体的な電話診療のメリットなどを説明して各科に協力を依頼して積極的な導入を進めました。また、メール連絡システムを持たない登録医療機関に電話診療開始についての文書を地域医療連携室より個別に郵送することも行いました。その結果、半年ほどで約2,700件の電話診療を行うことができました。

2020年6月7日〜

・会計受付やお薬受付番号を表示する液晶大パネルを院内数カ所に増設しました。当院は他の大学病院に比べて院内処方割合が多いこともあり、どうしても会計計算受付やお薬受け取り口に人が密集してしまうという問題があります。そこで、患者さんにこれまでより一層いわゆる三密を避け、分散して順番を待って頂けるように会計受付パネルをこれまでの院内6カ所から9カ所に増設しました。また、お薬の受付番号表示パネルについても4カ所から7カ所に増やしました。これにより、受付待ちの場所に集中していた患者さんが分散してお待ち頂くようになり患者さん同士でのソーシャルディスタンスを確保することができました(図4)。

図4:会計受付やお薬受付番号を表紙する液晶大パネルを院内数カ所に増設
図4:会計受付やお薬受付番号を表紙する液晶大パネルを院内数カ所に増設

2020年6月22日〜

・コロナ感染者数が落ち着いて来た状況に伴い、奈良県の病床確保要請が緩和されたたため外来初診予約受付を再開しました。予約受付再開の文書を地域連携室が連携登録医に連絡すると共にホームページにも各医療機関向けに掲載して周知を行いました。

2020年7月1日〜

・QRコードの活用を開始しました。患者さんのスマートフォンなどでQRコードを読み取ることで、院内のみならず駐車場など院外で待っていても会計や調剤の進捗状況が確認できるシステムの運用を開始しました。また、このシステムの利用を患者さんに啓発するためにポスターを作成しました。院内の各所に掲示すると共にフロア案内による口頭での説明も実施しました。外来医長会議においても周知してもらうよう各部署へ伝達を行いました(図5)。

図5:会計や調剤の進捗状況が確認できるQRコードシステムの運用を開始
図5:会計や調剤の進捗状況が確認できるQRコードシステムの運用を開始

2020年8月11日〜

・自動精算機を増設しました。院内でお薬を受け取る外来患者さんが全体の約半数であることから、院外処方の患者さんが混雑する精算場所へ寄らずに精算できるようにしました。駐車場に続く南出口付近に自動精算機を1台増設しました。これにより、薬の受け取りが不要な患者さんが車で来られた場合は、会計の精算後すぐに帰ることが可能になり、院内での滞在時間が短縮されました(図6)。

図6:自動精算機を増設
図6:自動精算機を増設

2020年10月〜

・QRコードの読み取り利用拡大のため各種取り組みを追加しました。チラシを作成して患者さんに個別にチラシを配付すると共に、10月26日〜12月25日までの2ヶ月間専用ブースを設置して説明員を配置、患者さんへの取扱説明を積極的に行いました。

2021年1月4日〜

・専門コンシェルジェを配置しました。2階外来待合に患者対応エキスパートの方を配置しました。一般的な患者さんへの案内に加えて、さまざまな取り組みに関しても詳しく説明してもらえることで患者さんが院内で不必要な動きをすることなどを避けることにも繫がっています(図7)。

図7:専門コンシェルジェの配置
図7:専門コンシェルジェの配置

2022年 今後の予定

・診察待ちのQRコードの読み取り利用に向けた準備を進めています。これまでの会計待ち、投薬待ちに加えて当日の受診診療科、および各担当医の診察状況が確認できるシステムを作成し、運用予定としています。これにより、各診療科の外来で待っていただく必要がなくなり外来での混雑緩和が期待できます。
また、セルフ到着確認システムの導入についても計画しています。診察券の読み込みリーダー機器を各診療科の受付に設置することにより、受け付け事務と患者さんとの診察券の受け渡しなどのやり取りや対面接触が減り、各診療科受付時の混雑が緩和されることが期待されています。

しかし、表1にあるように今回の診療制限などにより前年に比べて約6千人の初診紹介患者数が減少しました。大学病院に紹介される患者さんは悪性疾患をはじめとして入院を必要とする割合が非常に高くなっています。当院は、県民医療の最後の砦として高度医療が必要な患者さんを地域の先生から紹介いただき最新の治療を速やかに提供することが重要な使命の一つです。一日も早く今回のコロナ感染が終息し、県民のみなさんが必要な治療を速やかに受けることができるようになることを期待したいと思います。

表1 :今回の診療制限などによる初診紹介患者数の変化
表1:今回の診療制限などによる初診紹介患者数の変化