発熱トリアージWG

WGリーダー 清水 啓敏(院長特命参与)

1.取り組みの概要

 従来、当院の出入口はいくつもあり、比較的容易に出入りできる状況でした。また、外来診察患者数は多い日で3,000人超と大変混雑していました。診察は予約制ですが、患者さんは早朝から来られ受診まで外来で待機される方も多く、特に午前中は混み合っていました。2020年4月当初時点では、新型コロナウイルス感染症が容易に院内に持ち込まれクラスターとなる可能性がありました。

 そのため、院内感染のリスクを下げるために、病院の出入口を制限し、第一のトリアージとしてまず玄関を出入りする患者さん全員に対し検温やかぜ症状等の確認を行い、発熱等がある方は専用のトリアージ外来へ誘導するという方法に取り組みました。

2.実施方法

 いくつもあった出入口をまず4か所に制限しました。そのうえで外来患者さんや付き添い者の方は、北玄関または南玄関から入館していただき、玄関口に設けたトリアージを行う所を必ず通る運用としました。
 2020年4月20日より発熱等トリアージがスタートしました。
 新型コロナウイルス感染症対策は、病院及び大学の法人全員で取り組むという方針のもと、玄関口には職員が立哨し、声掛け案内を行いました。この案内は多職種を組み込んだ当番制としました。
 玄関のトリアージでは、入館する全員の検温と有症状の確認を行いました。そして、発熱等の症状がある方は専用のトリアージ外来へ誘導しました。 
 トリアージを開始した頃の発熱等のチェックは、職員が携帯した非接触型の体温計による検温と、症状確認シートをもとに症状や疫学的行動を尋ねていました。当初は玄関でトリアージし、有症状者は問診所で看護師が感冒症状や行動歴を聞き取りました。(現在、問診所は廃止。)(図1)
 専用のトリアージ外来は、当初、臨床医学研究棟大会議室に仮設されました。運用方法が見えない中でベテラン看護師等が日替わりで運営されるなか、連携の道筋が見えてきました。

開始当時(2020年4月)、トリアージの様子
(図1)

 当院では、以前は早朝6時ごろから入館できましたが、発熱等トリアージの開始以降は開門時間7時45分を厳守しています。1つの玄関を入口と出口に分け、出口専用の扉は中からしか開かないようにしました。玄関前の外の椅子は、朝早くから来られる患者さん用に準備したものです。来た順番に座れるよう番号表示し、また会話を控えるようにというポスターも貼っています。(図2)

入口/出口専用に区別
(図2)

 最初は建物の外で行っていましたが、現在は館内に入ると、トリアージ口を通るようになっており、職員が常駐して素通りしないよう注意を払っています。また、サーモグラフィ装置を導入して自動で体温を測れるようにするなどスムーズにトリアージできるよう改善してきました。
 また、2020年6月には待合室や処置室、酸素供給装置などを備えた新たなトリアージ外来が設置され、運営体制も整えられました。

 開始した当初は、7時45分の開門前に100人以上の方が来られるときもありました。特に夏の暑い日や冬の寒い日には待っておられる患者さんも大変でした。新型コロナウイルス感染症対策の一環として当院の開門時間は7時45分であることを当院ホームページ、鉄道駅貼りポスター、チラシ配布などを通じて呼びかけ続けました。
 現時点では、患者さんや来院者の方々の理解も進み、トリアージの重要性が認識され、落ち着いて対応ができるようになりました。(図3)

現在の様子
(図3)

3.考察

 2020年4月に開始したトリアージは、病院の事務職員や医療従事者など多職種体制から本学の教員や大学事務職員など協力者も増加し、法人全体として取り組むことができました。
 このようにして、玄関のトリアージの方法を多職種で話し合い、新型コロナウイルス感染症の持ち込みを防ぐ体制構築に取り組んだことは、病院全体で感染対策に取り組む危機意識を共有することになりました。
 また、トリアージが患者さんや職員に周知され、トリアージ担当者の判断で専用外来へ誘導することができています。新型コロナウイルス感染症の持ち込みを阻止するという目的を共有し、今後もこの取組を継続することが必要だと考えています。

<実施状況>

2020年 4 月 20 日 発熱トリアージ外来開始(臨床大会議室)
同時に、玄関トリアージスタート

  • 活動時間帯 平日7:45~17:00
  • 北玄関と南玄関の開門時間を 7:45とする。
  • 北玄関と南玄関で「検温、案内、誘導」に毎日10人~14人を動員(事務、医療技術職、ニチイ等)
  • 「問診所」を北と南の各玄関風除室に設置 4 人動員(看護師)

2020年5 月 7 日 連休明けより、体制変更

  • 「検温、案内、誘導」で7 人~11 人動員
  • 「問診所」は南と北で 2人動員

2020年6 月 3 日 旧リハビリ室で新トリアージ外来スタート

  • 「問診所」の業務はトリアージ外来内で実施
  • 「検温、案内、誘導」は7 人~9 人/日を動員

2020年 7月20 日 サーモグラフィ導入

  • 北玄関と南玄関に各 2台ずつ設置
  • 併せて自動音声案内を導入することにより業務を効率化
  • 「検温、案内、誘導」は6人~7人/日で実施。守衛室前玄関からの外来患者入館回避策として、ポスター掲示を大きく展開
  • 感染対策として、眼の防護を徹底する。フェイスシールド→マスクに張り付くアイガードを使用

2020年10 月 5 日より、体制変更

  • 「検温、案内、誘導」で4 人(午後)~7人(午前)/日を動員
  • 冬に向けての寒さ対策を検討→患者に対し午前中の会計時に 7 時 45 分以降にお越しいただく旨のチラシを配布 (令和3年2月末まで)

2021年1月4日より、

  • 玄関前トリアージ業務(北及び南玄関)を業者委託(ニチイ学館)

2021年3月28日

  • 南玄関にエアカーテン設置

(玄関トリアージ継続中)

 <トリアージ外来 WG 会議の開催状況>

  • 2020年4月8日16:00~ 院長室横会議室
  • 4月 10 日16:30~ 経営対策室
  • 4月 13 日16:00~ 院長室横会議室
  • 4月 15 日17:00~ 臨床大会議室現場確認
  • 4月 24 日11:00~ 院長室横会議室
  • 4月 27 日・28日各15:30~動員者に対する「感染対策の説明会」(笠原先生)
  • 5月 7日17:30~ 臨床研修センターカンファレンス室
  • 6月 3日 サーモグラフィ視察 県総合医療センター
  • 6月 19 日 サーモグラフィデモ1 北・南玄関風除室
  • 6月 26 日 サーモグラフィデモ2 北・南玄関風除室
  • 7月 2日14:00~ サーモグラフィ運用検討会 院長室横会議室
  • 7月 21 日16:30~ 臨床大会議室
  • 8月 7日16:00~ 臨床研修センターカンファレンス室
  • 10月5日17:00~ 臨床研修センターカンファレンス室
  • 11月 27 日17:00~ 臨床研修センターカンファレンス室

<玄関入場制限>

玄関トリアージの実効性を確保するため各玄関の入場制限を強化してきました。状況は以下のとおりです。

  • 4月 23 日~ 救急・夜間玄関の夜間運用時間 21:00~7:00→21:00~7:45
    臨床講義棟西横1F 病院入口開門時間 7:00~19:00→終日閉鎖
  • 5月 2日~ 土日祝の救急・夜間玄関における夜間運用 21:00~7:45→終日
    土日祝の南玄関及び B・C 棟玄関の開門時間 7:00~21:00→終日閉鎖
  • 8月 11 日~ 南玄関の開門時間 7:45~21:00→館内への入場のみ 7:45~17:00
    B・C棟玄関の開門時間 17:00~21:00→終日閉鎖