先端研究部会の取組

総括

先端研究部会 吉栖先生
先端研究部会部会長
吉栖 正典

 新型コロナウイルス感染症の蔓延は人類にとって大きな災厄ですが、本学ではこれを一つの機会と捉えて研究対象として取り組むことができるのではないかと考えました。新型コロナウイルス感染症の予防対策や診断・治療法の開発など、医科大学ならではの利点を生かして研究を進めることができました。その研究成果をいち早く社会に還元することができたのは、細井学長が主導して築き上げてきたMBT研究所と一般社団法人MBTコンソーシアム(以下、「MBTコンソーシアム」という。)の協力があってこそのことでした。

 MBT感染症外来ユニットは、もともとダイワハウス工業株式会社と共同開発していたプレハブ型発熱外来施設を新型コロナウイルス対応にリニューアルしたもので、パンデミックの早い時期に発表することができ医療界の注目を集めました。また、世界初のオゾンによる新型コロナウイルスの不活化の証明も、MBTコンソーシアム加盟企業のオゾン発生装置を用いて、本学微生物感染症学講座の矢野教授のもとで研究された成果によるものです。

 新型コロナウイルス感染予防の観点から提唱した、接触・飛沫・エアロゾルの「3感染ルート遮断」のアイデアは、コーヒーショップやレストラン、薬局などをモデル店舗として展開しました。これらの店舗では、消毒や感染防止アクリル板やMBTの取組で効果検証した感染対策製品などが整備され、感染予防効果の検証がなされています。

 その他、免疫学講座の伊藤教授を中心とした研究グループが、世界で初めて柿渋に含まれる柿タンニンが新型コロナウイルスを不活化するという研究成果を発表しました。口腔内を模した条件で唾液内に高純度柿タンニンを添加すると、新型コロナウイルスを1万分の1以下に不活化することを発見しました。この研究成果をもとに、募集したパートナー企業とともに柿タンニンを含んだのど飴、キャンディなどが開発・販売されています。また、柿タンニンの効果を検証するヒトを対象とした臨床試験も現在進行中であります。渋柿の柿タンニン以外にも、お茶や紅茶に新型コロナウイルス不活化作用があることが見いだされ報道発表もいたしました。

 本学附属病院感染症センターの笠原教授の指導で、一般企業や団体に対して新型コロナウイルス対策相談事業も行っています。感染対策のためリモート会議で助言を行うのみならず、場合によっては専門家が現地に出向いて指導・助言を行っています。さらにこの感染対策を社会生活の中で実践するために、模擬立食パーティーを開催し、感染対策の具体的アイデアを提案いたしました。

 このように本学の先端研究部会では新型コロナウイルス感染症に対して多方面から研究を行っています。すでに成果・製品となっている研究もありますが、現在進行形で今後大きな成果が見込まれる研究もあります。まだまだ今後もコロナウイルスとの戦いは続いていくでしょうが、単科の医科大学でありながら、ほぼ全ての業種、200社以上の企業と連携しているという本学の特性・強みを生かして我々は挑戦を続けていきます。

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