集中治療WGリーダー 川口 昌彦(麻酔科 教授)
新型コロナ感染症対策として集中治療WGが発足されましたが、ここでは主にC病棟3階集中治療部での運用について記載します。
○新型コロナ感染症拡大前の体制
当院のC病棟3階にある集中治療部(C3-ICU)は、循環器内科領域、心臓血管呼吸器外科領域、そして一般集中治療領域で構成されています。2014年末にICUを改築し1床当たり20平米以上のスペースを確保しながら13床から14床へ増床しました。麻酔科医、循環器内科医、心臓血管外科医で協力して運用しています。14床の内、10床はC病棟3階南側(C3南)にあり、4床はC病棟3階北側(C3北)に位置していました。感染症対策として使用できる陰圧の個室はC3南に1床のみありましたが、通常は使用していませんでした。
○C3-ICUの5床を新型コロナ専用に!
2020年4月2日に新型コロナウイルス感染対策病院部会の第1回が開催され、重症患者受け入れに対する体制を構築するため、集中治療WGが発足することとなりました。2020年4月6日に第1回集中治療WGを開催しました。C3-ICUの北側の5床を新型コロナ感染症専用の病床とすることとしました。C3北-ICUの全体が汚染エリアとなる構造で、全体に対する陰圧工事を4月8日に終了しました。しかし、新型コロナ専用5床のオープンICUを稼働するには多くの課題がありました。その運用方法を決定するため、4月14日に第2回集中治療WGを開催しました。 2020年4月2日に新型コロナウイルス感染対策病院部会の第1回が開催され、重症患者受け入れに対する体制を構築するため、集中治療WGが発足することとなりました。2020年4月6日に第1回集中治療WGを開催しました。C3-ICUの北側の5床を新型コロナ感染症専用の病床とすることとしました。C3北-ICUの全体が汚染エリアとなる構造で、全体に対する陰圧工事を4月8日に終了しました。しかし、新型コロナ専用5床のオープンICUを稼働するには多くの課題がありました。その運用方法を決定するため、4月14日に第2回集中治療WGを開催しました。
課題として、人員確保と勤務体制をどのようにするかが検討されました。通常は、集中治療の2床に対し1名の看護師を配置する体制になっていますが、新型コロナ感染症では1床に対し2名の看護師配置が推奨されています。同じ看護師数であれば、14床の内、新型コロナ患者が入った場合、3床は使用できなくなってしまいます(コロナ1床 2名、通常10床 5名)。新型コロナ患者が2名になった場合、さらに3床減少となります(コロナ2床 4名、通常6床 3名)。これでは、新型コロナ感染症以外の重症患者の受け入れが困難となり、県民の命を守ることができなくなってしまいます。看護師を重症病棟に確保するというのが最重要課題となりました。ICUでの勤務経験がある看護師を含め、応援体制を敷くこととなりました。そのためには一般の入院病床を70%まで減少させる必要があるということになりました。ただ、すぐに看護師の応援ができるわけではないため、段階的に5床まで病床数を増加していくということになりました。また、看護師の勤務は2交代制でしたが、勤務中に個人防御服(PPE)を着て勤務に従事するのは1回の休憩を入れて8時間が限界であろうと考慮し、コロナICUでは3交代制にすることとなりました。
新型コロナ感染症以外に使用できる集中治療病床が減少(8床程度)するため、心臓血管外科手術を含み、術後に集中治療管理が必要となる手術ができなくなってしまいます。また、重症患者の救急手術の受け入れも困難になってします。4月15日に開催された手術WGでは、手術枠を5割に削減することとなりました。緊急性のある手術、がんの手術が主で、不急の手術は延期する方向となりました。
○重症患者受け入れ病床を13床へ
2020年4月16日に全国を対象とした緊急事態宣言が発令されました。この時点で当院の重症患者受け入れ体制は、C3-ICU 5床と救命救急センターの救急集中治療室(ED-ICU) 2床の計7床という状況でした。主に疑似症はED-ICUで管理し、確定例はC3-ICUでという運用とすることになっていました。ただ、全国での感染症の拡大状況を考慮し、更に病床数を確保する必要性があり、4月17日の集中治療WGでは、ED-ICUの個室の陰圧化の追加、人工呼吸管理ができる病床をC棟8階の呼吸器内科病棟とでも5床準備するとことになりました。この段階で、C3-ICU 5床、ED-ICU 3床、C8 5床の計13床の体制を目指すこととなりました。
○C3-ICUでの重症患者対応の医師確保
5床のオープンICUを運用するための医師として3床までは、麻酔科 6名、循環器内科 4名、心臓血管外科 2名の診療体制で、3交代制で運用していくこととなり、4月20日にはその運用が開始されました。当時、集中治療部病院教授の井上聡己(現、福島医大麻酔科教授)がその診療チームを主導しました。しかし、4床以上になった場合、上記の診療チームだけでの実施は困難となるため、外科系医師に応援を依頼し、4月23日には、その応援態勢が確定しました。消化器外科、脳神経外科、整形外科、泌尿器科、口腔外科のご協力のもと、5月4日より、3交代制、各勤務医師3名の体制で運用することとなりました。ただ、幸いにも感染拡大と重症患者の受け入れ数はあまり増加しませんでした。
○C3北―ICUの間仕切り工事
感染状況が小康期になってきたため、6月より手術枠が拡大される見込みとなり、重症患者の受け入れ体制を維持しながら、一般の重症患者の受け入れを維持できる体制の構築が検討されました。また、今後長く続くだろう感染状況に対して、継続的に実施可能な体制への移行が望まれました。まず、C3北―ICUに間仕切りを設置し、これまで全体が汚染エリアでしたが、汚染エリアと清潔エリアに分けることしました。全体が汚染エリアであると、C3南-ICUから医師や看護師が応援に行きにくく、フレキシブルな体制を構築しにくかったためです。また、担当医などは勤務時間中PPEを装着する必要がありましたが、清潔エリアを設定することで、必要時のみPPEを装着するという勤務体制になるため、3交代制から通常の勤務体制にすることとしました。当直室も清潔エリアに確保することができました。通常勤務体制に戻したうえで、日勤は麻酔科が担当し、夜間休日は麻酔科、循環器内科、心臓血管外科の医師で分担して担当しました。外科系医師の応援体制は一旦、終了ということになりました。看護師については、継続的に他部署からの応援を実施していただきました。
○第2波から第3波へ
2020年7月頃より再度、新型コロナ感染症の第2波となりましたが、上記の勤務体制での運用が可能でした。C3北-ICUのコロナ病床の稼働率は平均27%とまだ余裕がありました。しかし、2020年11月からの第3波の感染拡大により、5床運用が多くなり、平均稼働率は93%となり、多くの患者さんの入室を断らざるおえない状況もありました。この状況を鑑み、第4波に備え、2021年4月よりC3北―ICUを5床から6床に増床しました。比較的スペースがあったため、間仕切りを追加し、ベッドとモニターや電子カルテなどの整備をおこないました。6床に増床したにもかかわらず、第4波では平均稼働率は95%という状況でした。満床状態が続き、患者さんを受け入れられないというストレスの中、多くのスタッフが頑張って対応してくれました。
○一般のICU患者さんへの影響
C3北-ICUを最大限活用する一方で、C3南での一般のICU患者さんの調整は大変難渋しました。平均8床運用で、平均稼働率は97%でした。もともと14床で運用していたのが8床に制限されるので、その調整は極めて困難になります。術後に集中治療室入室予定の患者を受け入れできなかったり、ベッドがないため手術を延期したり、重症にもかかわらず一般病棟で管理したりなど、重症患者の管理には重大な影響が及びました。特に大学病院でしか受け入れられないような、高難度手術や緊急手術などの実施が困難な状況は、県民のみなさんへの影響が大きな問題であり、今後の医療体制をどのように構築するかが課題であると考えられました。
最後に、非常に厳しい困難な状況ではありましたが、細井裕司学長や吉川公彦病院長の指揮のもと、各医療者が一致団結して協力しながら、迅速に対応できたことは非常に好ましい状況であったと思います。また、何より現場のスタッフが、厳しい勤務環境の中、献身的に患者さんに対応いただきましたことを心から感謝したいと思います。