学生・職員に対する健康サポート

健康管理センター 古西 満

1.体調不良者に対する対応

 2014年に「健康管理センター」が教育研修棟1階に設置された際に「保健室」も作られ、登校・出勤後に体調不良などを認めた際には利用されています。わが国では2020年4月から新型コロナウイルス感染症の第1波が始まり、健康管理センターにおいても保健室利用者に対する感染対策を実施しています。

 体調不良等での保健室の利用は従来から学生が中心で、職員の場合は主に事務系職員が利用されています。保健室の利用状況は、2020年度が学生で49件、職員で20件、2021年度(12月末時点)が学生で75件、職員で35件となっています(表1)。リモート授業が実施され登校すること自体が減っているため、学生の利用頻度は2019年度までに比べると激減しています。保健室の利用内容も新型コロナウイルス感染症が疑われる場合には、登校・出勤しないことが徹底されており、風邪症状様の訴えは少ない状況が続いています。さらに職員については各部署や感染管理室への相談で対処していることが多いので、利用件数が少ないものと考えています。 学生の新型コロナウイルス感染症が疑われる場合には教育支援課に欠席連絡が入り、その情報を元に健康管理センター看護師が中心となって該当学生に電話連絡をして、体調確認と対応方法の指導をしています。その実施件数は、2020年度で58件、2021年度(12月末時点)で156件となっています(表1)。

2020年度2021年度
医学科生2154
看護学科生2822
ヒアリングシート58156
職員2036
表 1:健康管理センター保健室の利用状況

 また、本学では新型コロナウイルスワクチン接種が2021年3月から6月にかけて実施され、ワクチン接種後の副反応に関する相談窓口を健康管理センターに開設し(平日の勤務時間内のみ、それ以外は感染症センター)、対応しています。相談件数は1回目接種時で学生が13件、職員が47件、2回目接種時で学生が73件、職員が98件あり、一部で病院受診や欠席・休職が必要なっています(表2)。一般的に新型コロナウイルスワクチンの副反応は2回目接種時に多くなっていることが報告されており、本学での相談件数からもその状況をみてとることができます。

1回目摂取2回目摂取
医学科生1373
看護学科生4798
病院紹介46
休暇指示1667
表 2:コロナワクチン接種後の副反応相談件数

2.新型コロナウイルス感染症に関連した職員の健康相談窓口

 本学では、病院部会でさまざまなワーキンググループが立ち上げられ、その中の一つに「職員サポート ワーキンググループ(リーダー:精神科 2020年4月~2021年3月太田豊作先生、2021年4月~現在 鳥塚通弘先生)」があります。健康管理センターはそのワーキンググループの一員に加わっており、職員の健康相談窓口を設置することを提案し、実施しています。これは、中国武漢における医療従事者のメンタルヘルスに関する報告(JAMA Network Open, 2020; 3(3): e203979)で、新型コロナウイルス感染症診療に従事した医療者では、うつが50.4%、不安が44.6%、苦悩が71.5%などの心理状態であったことが報告され、日本赤十字社が作成した「新型コロナウイルス感染症に対応する職員のためにサポートガイド」には組織からのサポートが極めて重要であると記されていることから提案しました。

 電子カルテメールおよび大学一斉メール、所属長への文書などで「健康相談窓口」設置の周知を行いました(図1)。相談希望者は健康管理センターへ申し込み、相談日時を調整した後に健康管理センター相談室にて産業医が面談を行いました。面談時には心理テストPOMS(Profile of Mood States) 2を実施し、心理状態を把握するようにしました。心理的に問題がある場合には、産業医面談の継続や緩和ケアセンター四宮敏章先生や精神科カウンセラーへのカウンセリングを依頼できる体制を整えました。また、日本赤十字社が作成した「COVID-19対応者のためのストレスチェックリスト」をプリントアウトして病棟等へ配布しました。

図 1:「健康相談窓口」の案内ポスター
図 1:「健康相談窓口」の案内ポスター

 「健康相談窓口」には21名の相談がありました。POMS 2の結果では、うつが5名、不安が7名、混乱が7名に認められましたが、大半は軽症であり後日の確認では改善していました。しかし中等症以上の3名は産業医面談を継続することにしました。新型コロナウイルス感染症に罹患した学生2名の面談を行い、後遺症などは認めませんでしたが、感染経緯などについて非難を受けたこともあり、POMS 2では軽度の不安を認めていました。

3.病棟の巡視

 新型コロナウイルス感染者は、C棟8階、B棟7階、C棟3階ICU、救急科ICU/HCU、バースセンター、小児センター、D病棟、透析室などさまざまな病棟で診療を受けていました。そのため、病棟の状況を把握するために患者さんのいる病棟を巡視するようにしていました。病棟で勤務している職員の様子を確認したり、師長・主任と話をして困り事がないかを聞いていました。

 病棟スタッフからは、不安や不満を訴えることよりも病棟の皆で一致団結して乗り越えていこうという気概が感じられました。しかし、当初は新型コロナウイルス感染症に関する情報や対応策に混乱があったり、自分が感染して家族などへ感染を拡げてしまう不安などはありました。また、新型コロナウイルス感染症の病棟とその他の病棟のスタッフの間に若干の温度差が生じていることもありました。感染者数が増加するとともに病棟へのスタッフの応援派遣が始められた際には元々のスタッフと応援スタッフの間にギャップを感じることも耳にしましたが、それも徐々に解消していきました。最もスタッフ間に動揺があったのは、病棟で最初に患者さんが亡くなられた時でした。これまでとは異なった家族に看取られずに亡くなることは衝撃的であり、関わったスタッフの心労は大きく、病棟ではデス・カンファレンスを開催して、この危機を乗り越えました。

 病棟巡視は、産業医の空き時間に不定期で訪れていたため病棟側では十分に対応ができず、伝えたいことも伝えられなかったのではないかと反省しています。また、巡視には衛生管理者や病院関係者などを同行することで、より問題点が明確化できる可能性もあり、今後の検討課題であると考えます。

4.情報の提供

 健康管理センターでは情報提供するために健康管理センターだより「そよ風」を発刊しています。新型コロナウイルス感染症に関する情報も「そよ風」に掲載しています。2020年7月発刊の第3号には「新型コロナウイルス感染症の第2波に備えて―健康管理センターの健康相談窓口―」、2021年1月発刊の第4号には「コロナワクチンについてもう少し知ろう!」を掲載しました(図2)。

 2021年4月2日には新入職員オリエンテーション、看護学科ガイダンス、4月6日には新入生オリエンテーションで、新型コロナウイルス感染症の現状、疑わしい症状時における大学での対応方法、ワクチンのことなどを紹介しました。