挨拶
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2019年12月31日、中国湖北省武漢市から原因不明の肺炎の集団感染事例として世界保健機関へ報告されました。その後、世界中でまたたく間に感染が拡大し、2年経過した今でも人々に多大な影響を与え続けています。
本学では、この2年間、奈良県における最終ディフェンスラインとしてコロナ患者受け入れの一翼を担ってきました。本学で初めての入院患者さんを受け入れたのは2020年1月末のことです。その後、患者数はますます増加し、4月には奈良県からの150床のコロナ用の空床確保要請に応じることとなりました。約1000床の病床数を抱える本学附属病院において、感染対策はどうするのか、また、発熱トリアージや病床の確保、検査の対応から職員のサポートはどうするか、誰が何を決めてどのように実行するのか、早急に対応すべきことが山積みの中、何もかも手探りの取り組みが始まりました。
そんな中、全学が一致して取り組むために設置したのが「新型コロナウイルス感染症対策本部」です。対策本部には、「病院部会」、「教育研究部会」などの新型コロナウイルスに対して防御する部会だけでなく、対策を提言・発信するための「先端研究部会」、「記録部会」を組織し、わたしは本部長としてすべての情報を本部にあげて決定する仕組みづくりを行いました。また、本部で決定された内容をコロナ対策本部ニュースとして速やかに全学に発信し、情報の共有を行いました。
4つの部会においては、病院部会では附属病院での対応を、教育研究部会では、大学行事や学生の講義などへの対応を行いました。先端研究部会においては、MBT コンソーシアムの協力のもと、多くの研究成果が産み出されました。プレハブ型発熱外来の開発と普及、そして、新型コロナウイルス不活化については、オゾン、柿渋、光触媒、お茶の有効性を世界で初めて実験的に証明しました。記録部会においては、NHK との共同事業により密着取材が行われ、その様子が「NHK スペシャル」、「プロフェッショナル」等で放映されました。
このような、まさにこの時代の現場に立ち会ったわたしたちの取り組みをとりまとめたものが、本記録集です。ワクチンが普及し、一時は収束を迎えるかにみえたコロナウイルスも、2022年2月現在、第6波の感染拡大が続いています。これからも様々な困難が続くことが予想されますが、医師・看護師・コメディカル、そして研究者・事務職員等々が一丸となって取り組んだ経験は、わたしたちの財産となって今に活かされています。
記録集を通じて、多くの人々にわたしたちの取り組みを知っていただき、今後の対策に活かしていただけましたら幸いです。