看護部の対応

看護部長  橋口 智子

対応病床150床の確保と人員確保

 2020年度が始まった直後の4月2日、新型コロナウイルス感染症対策の緊急会議が開催され、対応病床150床を確保することが決まりました。担当することとなったのは、C棟8階、B棟7階、B棟6階、メディカルバースセンター、小児センター、精神医療センター、集中治療部、救命救急センターICUでした。その中で軽症~中等症の患者受け入れ病棟となったのは前述の集中治療部と救命救急センターICUを除く6病棟でした。

 中でもC棟8階は、1類感染症に対応できる感染症センターを有しており、担当する看護師は、日頃から感染症対策の訓練を実施していました。新型コロナウイルス感染症で渡航歴のない日本人初の感染者を同年1月に受け入れ、同年2月には横浜港に停泊したダイヤモンドプリンセス号の乗客4人を受け入れた経験がありました。しかし、B棟7階、B棟6階の看護師にとっては、初めてのことでしたので、病室の準備や感染防護具を着用してのケア実施のトレーニングをC棟8階で実施しました。そして、各病棟の運用開始時にはC棟8階の看護師に感染症患者の対応においてリーダーシップを発揮してもらいました。これらの準備と同時に、入院患者さんで退院可能な方には退院していただきましたが、継続して入院治療が必要な患者さんには、他の病棟へ移動していただく必要がありました。C棟8階の32人の患者さんには4月8日~16日の9日間に4つの病棟に移動していただきました。また、B棟7階の患者さん31人は4月22日~28日の7日間に7つの病棟へ、B棟6階の患者さん22人は4月28日~5月2日の5日間に6つの病棟へ分散して移動していただきました。この間、バースセンター8床は全室個室であったことから、これらの病棟の受け入れ準備が整うまで順次患者さんを受け入れてもらいました。そのため2020年4月4日以降現在まで、メディカルバースセンターとしての機能を停止しています。メディカルバースセンターは、院内助産の病棟ですので、勤務者は全員助産師です。看護師とは異なり、助産業務が主な職種であることから、新生児のケアを実施する助産師がコロナウイルス対応をしてよいのかという不安と疾患を持つ患者の看護に不慣れであることの不安を抱えていました。平時にE棟5階やMFICU(母体児集中治療室)との応援体制を構築していたことから、コロナ患者の受け入れ病棟としても機能できる勤務体制に変更しました。

 感染者増加の波が来るたびに入院患者の増減が繰り返され、病棟を専用化したり、一般化したりが繰り返され、その都度人員確保のための人事異動を行いました。

集中治療を要する重症患者対応ができる看護師の確保

 集中治療を要する重症患者さんは、集中治療部(C棟3階)と救命救急センターICUで受け入れることとなりました。それぞれ通常の機能を維持しながら新型コロナウイルス感染症重症患者を受け入れるためには、看護師の人数は全く足りていませんでした。当初は、救命救急センターICU2床、集中治療部4床の確保でしたが、重症患者が増加し、大学病院としての使命を発揮するために中等症、重症患者を主に受け入れる方針に転換するとともに、救命救急センターICU4床、集中治療部6床、C棟8階に4床の計14床を確保することになりました。集中治療室の通常の人員配置は、患者2人に対して看護師1人が基準ですが、集中治療学会からは、感染症対策を講じて安全にケアするための人数は、患者1人に対して看護師2人が必要という試算が示されました。そこで、これまでに集中治療部・救命救急センターICUでの勤務経験があるスタッフを洗い出し、異動後の年数の長短に関わらず協力を依頼しました。多くは、各部署でリーダーシップを発揮できるベテラン看護師や看護主任でした。該当する経験者は57名おり、第3波が落ち着いた2021年1月までで47名が集中治療部、救命救急センターICUへ異動し重症患者対応スタッフとして従事しました。重症患者が多く発生した第3波、第4波の時期には最大25人の応援スタッフを投入し対応にあたりました。応援スタッフを送り出す各部署の看護力にも大きな影響がありましたが、看護師長のリーダーシップの下スタッフをきめ細かに支援していただき、協力して乗り切ることができました。長期にわたり応援スタッフとして勤務していたスタッフのモチベーション維持が困難な状況になりつつありました。この時期には、各部署に1~4人のトレーニング終了のスタッフを確保できており、看護師長達の声を反映し、2021年9月から全部署協力の下、日勤者2名、夜勤者2名の応援シフト体制による人員確保に変更しました。電子カルテの部門システムが統一されたことにより、集中治療部と救命救急センターICUのスタッフ間での応援体制を構築することができました。この応援体制により限られた人員を状況に合わせて柔軟に交流させることができ、効率のよい人材確保に繋がりました。

重症患者対応の応援看護師延べ人数 (2020年4月~2022年1月)
重症患者対応の応援看護師延べ人数(2020年4月~2022年1月)
重症患者対応看護師応援勤務のべ回数 (2021年9月~2022年3月)
重症患者対応看護師応援勤務のべ回数 (2021年9月~2022年3月)

感染者の看護

 第1波の頃は軽症者が多く、接触をできるだけ短時間にする必要があったため、ナースコールを活用しての状態確認や説明を行うことが多かったです。しかし、感染が拡大してくると家庭内感染による患者が増加し、一家族で病室が埋まることも多くなりました。同時に高齢者の感染者も増えました。高齢者は入院という環境変化だけでも大きなストレスを受ける上に、病室から出られない、家族に会えないなどのストレスが更に加わりました。看護師が、PPE(個人防護具)を装着しており顔や表情が見えないなども高齢の患者には不安要素となりました。病室内だけでしか過ごせないことが、筋力低下・体力低下の原因と考えられたため、動ける方には付き添って廊下を散歩したり、ラジオ体操をしたりと気分転換も考慮した運動を取り入れました。当初はPCR検査で2回の陰性確認ができなければ退院できなかったため、長期間の入院を余儀なくされた高齢者もいましたが、この運動の効果か無事退院できる患者さんも多々おられました。

 重症化傾向にある高齢患者さんには、病状の説明と同時にDNAR(蘇生する見込みがない患者に対して、蘇生措置を行わないという、患者本人あるいはその家族などの意思表示)の有無を確認することが行われました。結果、亡くなられて退院するという方も沢山おられましたが、最後まで面会が叶わず、叶うのは納体袋に納めさせていただいてからの短時間で、お別れをしていただくこともありました。このような状況は想像もしたことがなく、コロナさえなければという看護師からの言葉が聞かれ、通常の看護ができないことへのジレンマを訴える者もいました。

一般病棟の看護

 新型コロナウイルス対応となった病棟からの患者さんを受け入れた病棟の看護師は、これまで携わったことのない疾患の患者さんの看護を実施することになりました。慣れない処置や指示、医師との協働への戸惑いと、事故を起こさないかという不安が大きくありました。医師にはこれまでの担当病棟と同じような指示の出し方や処置のやり方はできないことを伝え、密なコミュニケーションをとり、互いに工夫して協働できる環境をつくりました。

 院外からの感染を持ち込まないために面会を禁止することとなりました。面会は許可された時のみとなり、時間も短縮したため、入院患者さんは家族に会えない状況になりました。高齢者や終末期を迎えている患者さんには、家族となかなか会えない状況になりましたので、不安を強くされた患者さんへのケアは看護師の役割として更に大きくなりました。新型コロナウイルス感染症がなかったら、患者さんを直接見て、触れて様子を把握できていたことも、面会禁止によって十分に知ることが出来なくなり、患者さんの状態の変化の連絡を受けた家族が理解するのに時間を要したこともありました。

トリアージ外来開設に伴う看護師配置

 来院する人の中から新型コロナウイルスに感染している人、その疑いのある人を分ける必要が出てきたため2020年4月から玄関でのトリアージが始まりました。事務職員やコメディカル、看護職など多職種が協力して日々の業務を分担しました。5月からは救急他科外来を受診する患者の中で有症状者と交差しない環境を作るために脳神経外科外来での夜間の運用が始まりました。この外来を担当したのは、C棟8階、B棟7階,B棟6階のコロナ対応病棟となった部署の看護師でした。その後、9月には旧リハビリテ―ション室を改修して24時間体制で有症状者の一般外来患者と交差しない環境づくりが行なわれました。24時間体制を維持するために9人を人事異動させ専従者として配置しました。

最後に

 新型コロナウイルスが未知のウイルスであることから看護師は自らが感染してしまうことはないか、又、家族へ感染させないかという不安を抱えていましたが、自分たちは医療従事者であるという使命感を強く持って、役割遂行に臨んでくれました。この不安に対して、各病棟の開設時には、感染症センターの医師、看護部長、担当副部長が職員へ直接説明を行ったことで、理解を示してくれましたし、誰一人として離脱を申し出るものはいませんでした。

 コロナ対応に従事する希望者を募ることも考えましたが、急な病床編成であったことから普段関わることの少ない診療科の患者を引き受ける病棟の看護力を維持し、各部署の環境が激変する中で既存の看護チームの力を活用することを決めました。しかし、入職間もない新人看護師だけは、他の病棟への異動をお願いしたところ、彼らも状況をしっかりと受け止めてくれました。

 このような状況で、当院がどのような方針をもって動いているのか、情報共有が非常に大切でした。そのために毎週金曜日に開催された新型コロナウイルス感染症対策本部病院部会の後には、看護師長や代理の副師長、看護主任を集めて、いち早く看護部内で情報共有し、看護部として準備することなどを検討することができました。

 新型コロナウイルス感染症に対応するための看護部としての最大の課題は、人員の確保でしたが、全看護職で協力し、また様々な不安に対する支援策を講じていただいたことで乗り越えてこられたと感謝しています。